父が食道がんで亡くなって、二年半が経った。
季節がいくつか変わって、母は少しずつ、父のいない空間に慣れてきたように見える。
食卓の並びも、テレビの音も、父の気配が消えた家の静けさにも。
でも、ふとしたときに母が言う。「パパがいないのは、やっぱり寂しいね」
その言葉が、私の胸の奥に静かに沈んでいく。
私は娘として、できる限り母のそばにいたいと思っている。
何かしてあげたい。寄り添いたい。寂しさを、少しでも和らげられたらと。
でも、どこかで「自分にできることは限られている」と感じている自分もいる。
母の口から出る、ふとしたひとことに、傷つくことがある。
私なりに頑張っているつもりなのに、まるで何も伝わっていないような、
ときには責められているような気持ちになることもある。
「もういいや、すこし離れたい」って思ってしまう日もある。
そんな日は、そっと距離をとる。黙って席を外す。
そうすると、今度は自分が冷たい人間に思えて、胸の中に罪悪感がとっても、広がっていく。

寄り添うって、どういうことなんだろう。
そばにいること?話を聞くこと?受け止めること?
それとも、ただ黙って背中を見守ること?
答えはまだ、わからない。
だけど、無理に「いい娘」でいようとしなくてもいいのかもしれない。
寂しさに耐える母の強さを信じながら、私も自分の感情を大切にしていいのかもしれない。
母の「寂しい」という言葉に、どう返すのが正解なのかわからないけれど、
「うん、そうだね」とだけでも言える自分でいたい。
寄り添えない日があってもいい。
でも、また明日、もう一度向き合ってみようと思えるなら、それでいいのかもしれない。

寄り添うって、たぶん「完璧」を目指すことじゃない。
迷いながらも、大切に思っていること。
揺れながらも、そばにいたいと願うこと。
それを、私は少しずつ学んでいる。


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