伝え返しが浅くなるとき、事例検討では何が起きているのか

キャリアコンサルタント

「その伝え返し、少し浅い気がしますね」

事例検討の場で、こんな言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
私自身、何度も言われてきましたし、正直なところ、最初はその意味がよく分かりませんでした。

相談者の言葉を繰り返している。
内容も外れていない。
それなのに「浅い」と言われる。
何が足りないのだろう、と感じていました。

事例検討を重ねる中で、少しずつ見えてきたのは、
伝え返しが浅くなるとき、相談者ではなく、こちら側の事情が前に出ているということです。

たとえば事例検討で、
・次の質問をどうするか
・支援方針をどう立てるか
・この面談をどう展開させるか

そんなことを考え始めた瞬間、伝え返しは「作業」になりやすくなります。
相談者の言葉を受け取る前に、頭の中ではもう次の一手を考えている状態です。

このとき、事例検討ではよくこんなやりとりが起きます。

「その伝え返しで、相談者は分かってもらえたと感じるでしょうか」
「相談者の迷いに、ちゃんととどまれていますか」

ここで問われているのは、言葉の正確さではありません。
相談者の世界に、どれだけ入ろうとしているかです。

伝え返しが浅くなる背景には、
「早く整理したい」
「何か役に立つことを言わなければ」
「面談を前に進めなければ」
というキャリアコンサルタント側の焦りがあります。

事例検討では、その焦りがはっきりと見えてきます。
なぜなら、事例には時間制限も、沈黙の重さも、相談者の表情もないからです。
だからこそ、こちらの思考や姿勢が、そのまま言葉に表れます。

伝え返しが浅いと感じるとき、
それは技法が足りないのではなく、
相談者の言葉に、まだ十分にとどまれていないサインなのだと思います。

事例検討で
「もう少し、この言葉にとどまってみませんか」
と言われる場面があります。
それは、関係構築の問いでもあります。

関係は、理解したつもりになった瞬間に、少しずつずれていきます。
伝え返しは、そのズレが最初に表れるところです。

だから事例検討は、
「なぜ私はここで、この伝え返しを選んだのか」
「本当に相談者の言葉から出てきた一言なのか」
を立ち止まって考える場なのだと思います。

伝え返しが浅くなったと感じたとき、
それは失敗ではありません。
むしろ、関係を見直す入り口です。

事例検討は、
伝え返しの巧さを競う場ではなく、
相談者にとどまり続けようとする姿勢を育てる場

そう捉えられるようになってから、
「浅い」という指摘は、私にとってとても大切なヒントになりました。

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