「伝え返しがうまくいかないとき、どうする?」
〜沈黙・混乱・拒否に向き合う、支援者の姿勢〜
これまでの章では、「キャリアコンサルタント」と私が今勉強している「産業カウンセラー」における“伝え返し”の違いを、会話例やテーマ別に掘り下げてきました。
ここで少し視点を変えて、「伝え返しがうまくいかないとき」について考えてみたいと思います。
これは、どんな支援者であっても一度は直面するテーマではないでしょうか。
◆ 「はい…」しか返ってこないとき
ロールプレイの中でも、実際の面談でも、伝え返しをしたあとに
「……はい」
「……うーん、そうですね」
と、反応が薄い/会話が止まるといった経験をされた方は多いと思います。
このような場面でよく起こるのは、
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伝え返しのタイミングが早すぎた
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相手がまだ気持ちを言葉にできていない
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支援者の返しが「言葉の意味」だけに偏っていた
ということです。
そんなときは、「今は言葉にならない感情があるのかもしれない」と受け止め、“返す”より“寄り添う”に重心を移すことが大切だと思います。
◆ 「そうじゃないんです」と言われたら
支援者として一番ドキッとするのがこのひと言かもしれません。
「いや、そうじゃなくて……」
「そういうつもりじゃなかったです」
伝え返しの内容が、クライエントの感覚とずれていたということです。
このとき、焦って言い直すよりも、ズレに気づかせてくれたことに感謝することが第一歩です。
例)
CO「そうじゃなかったんですね。私の捉え方と違っていたこと、教えてくださってありがとうございます。よかったらもう少し聞かせてもらえますか?」
このように、「間違ったから修正する」のではなく、“一緒に調整していく”という姿勢で伝え返しを続けることが、信頼関係にもつながります。
◆ 沈黙になっても、意味がある
伝え返したあと、相手が黙ってしまうと不安になります。
「何か間違えたかな?」
「ちゃんと届いてないのかも」
と感じるかもしれません。でも沈黙には、
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受け止めようとしている
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自分の気持ちと向き合っている
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まだ言葉にできないだけ
…という大事な「内的な作業」が含まれていることもあります。
沈黙を「失敗」と捉えず、静かに待つ、見守る、寄り添うことも、伝え返しの一部と考えると、支援の幅が広がっていきます。
◆ 「返せない自分」を責めなくていい
面談やロープレ中、
「何を返したらいいかわからない」
「伝え返しの言葉が見つからない」
という瞬間もあります。
でも、それは支援者がクライエントの話に真剣に向き合っている証拠でもあります。
ときには、
「今、○○さんの言葉をそのまま受け取っているところです」
「少し時間をください。今、お話を自分の中でも整理しています」
と、「言葉が出てこない自分」を正直に共有することも、誠実な関わりになるのです。
◆ 経験ではなく、“態度”が信頼を生む
「伝え返しがうまくできた」と思うときよりも、
「正直に向き合えた」と思える面談の方が、
相手の表情がやわらいでいた、という経験はないでしょうか。
うまく返すことを目指すのではなく、
一つひとつの言葉を大切に受け止めようとする“姿勢”こそが、伝え返しの核なのだと思います。
◆ まとめ
伝え返しは「スキル」でありながら、「関係づくり」の土台でもあります。
うまくいかないときこそ、支援者としての姿勢が問われる時間です。
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反応が薄くても、沈黙でも、意味がある
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ズレがあっても、調整していけばいい
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言葉が出てこないときは、正直でいればいい
そんなふうに、「うまくやること」から解放された伝え返しは、
もっと深く、あたたかいものになっていきます。
次回はいよいよ第5章/シリーズ最終回。
伝え返しを「技法」で終わらせないために、私たちが大切にしたいことを一緒に考えていきましょう。


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